「枝豆とカルピス」は著者のオリジナル小説です。
投稿小説サイト「エブリスタ」他でも掲載していましたが
今回こちらに移動しました。
ダメ人間の可乃子とそれをとりまく優しい人々の物語。
完結版ですのでぜひ最後までお楽しみください。
1.
大股で飛び乗った高塀の上からの眺めは、思ったよりも良くなかった。
この塀の中から飛び出せば、事が好転するという希望もさしてなく、
だからといってここに留まるつもりもない。
可乃子は強い風にスカートを翻し、曇天に向かって高く飛ぶ。
えいやっと
すたん
綺麗に着地を決めた視線の先には、さびれた商店街のアーケードが見えた。
走り抜け
そう心が言っている。
もう捨ててしまえ。背負うな何もこれ以上。
そう、心が言っている。
その日、可乃子に影はない。影を作る日の光。ぬくむ陽光もなにもない。
なにもないのがいけないか。
そんなことはない。
そんなことはまったくないだろ。