神戸のパン激戦区で私が実践してきた、ベーグルの味を主役にした集客法。SNSと対面をつなげて「また食べたい」と思ってもらえる仕組みを作る方法をお伝えします。
はじめに — 神戸という街と私の不安

神戸はパン屋が本当に多く、競合だらけの街です。私は小さなベーグル屋を始めると決めたとき、正直言って「この街でやっていけるのだろうか…」と大きな不安がありました。
開店して5年ほどたった頃、近くに大手の人気ベーカリーがオープンしたこともあり、「もうお客様はそちらに流れてしまうかもしれない」と覚悟した時期もありました。ですが、その不安は不思議と現実にはなりませんでした。
ここで私が悟ったのは、「もともと私は競争の土俵にいないのだ」ということです。
大手と比べるほどの規模でもなく、商品数も設備も人員もまったく違う。
だからといってそれを卑下するのではなく、小さな店だからこそできる価値を積み重ねる。
来てくださるお客様に丁寧に向き合い、背伸びをせずに自分らしく続けることが、個人店を続ける秘訣だと実感しています。
1. オンライン戦略(味のファンづくり)
私は Instagram と X(旧Twitter)を使って、店の世界観や商品の魅力を発信してきました。ベーグルは写真映えするので、特にInstagramとの相性が抜群です。
■Instagram投稿を「ただの写真投稿」では終わらせない

ベーグルの写真だけを淡々と投稿しても、魅力は伝わりにくいです。私が意識していたのは、
- 焼き立ての香りまで想像できるような短い言葉
- おいしく感じるネーミング
- 季節感を意識
こうした「写真+物語」を心がけることで、「この味を食べてみたい」という気持ちにつながる投稿になりました。発信はベーグルそのものの魅力を前に出すことを考えてきました。
■ ブログは“深い理解”を育てる場所
私のホームページでは、ブログを最も大切にしてきました。
ブログは即時的な売上の道具というより、「ベーグルを知ってもらう」「味に興味を持ってもらう」ための場だと考えています。
SNSよりも深い内容を求めて来てくださる方のために、
- ベーグルの歴史
- 使用している材料(小麦・酵母・塩・水など)の知識
- 発酵の基礎と実践のコツ
- ベーグルをおいしく食べるための保存法やアレンジ
このような「読み物」を揃えておくことで、来店前の期待値を高め、来店後の満足度につなげています。私自身が口数の少ないタイプなので、文章を通して味の魅力を伝えることが大切でした。
2. 対面戦略(“味”で選ばれるお店になる)
オンラインで興味を持ってくださった方に実際に来店してもらうため、対面での接点づくりも欠かせません。私はイベント出店や地域のマーケットに積極的に参加してきました。
■ イベント出店は新規顧客の宝庫

近所のアンティークショップの紹介で神社の青空市に出店したり、摩耶山のリュックサックマーケットに参加した経験があります。こうした地域イベントは、新しいお客様との出会いの場としてとても有効です。出店の際には必ずチラシを配り、後日私の店へ来てくださる方も少なくありませんでした。
■ 初来店のお客様の“緊張”をほどく接客
私の店舗は少し奥まった場所にあるため、初めて来られる方は緊張していることが多いです。
だからこそ私は、必要以上に話しかけるのではなく、
- 笑顔と明るい声で迎える
- ほどよい距離感を保つ
- 味の良さを伝える簡単な一言(例:「焼きたてです」など)を添える
このような接客の積み重ねが、リピーター化につながっていると感じています。
多くのお客様が「ベーグルヤさんのベーグルの味が好きで来ている」と言ってくださるのは、ほんとうに嬉しいことです。
3. 小さなお店の集客は“積み上げ型”が基本
集客は短期的に爆発するものではありません。特に個人店は、日々の小さな行動を積み重ねることで信頼が生まれます。私が大切にしているのは次の点です。
■ SNSで味の魅力を継続的に伝える
毎回完璧な写真を撮る必要はありません。むしろ、味の質感や断面、素材がわかる写真を中心に、短い説明を添えるだけで効果があります。投稿のテンプレート化(例:「本日のラインナップ」「売切れ情報」「お取り置きの方法」)をしておくと負担が減ります。
■ ブログで深い理解を提供する
ブログ記事は、購入前の期待形成と購入後の満足度向上の両方に寄与します。発酵の話や材料の違い、保存方法のコツなど、「読むと得する」内容を揃えておくと、リピーターになりやすいです。
■ 対面では“安心して買える”雰囲気作りを最優先に
私は無口ですが、それが逆に強みになることもあります。落ち着いた空気感、丁寧な商品説明、焼き立ての温度感を大切にすることで、味そのものを評価して来てくださるお客様が増えていきます。
4. 実践的なテクニック(すぐに使える施策)
■ Instagramの投稿ルーティン(週3営業の場合)
- 営業日朝:その週のオープン情報。メニューラインナップ(写真+簡単な説明)
- 営業日途中:新作案内・売切れ速報や再入荷情報(ストーリーズでこまめに)
- 定休日:ブログの新記事アップのお知らせ
■ ハッシュタグとジオタグの使い方
ハッシュタグは「#ベーグル」「#神戸ベーグル」「#クリームチーズ」など、地域と商品を組み合わせたものを。ジオタグを必ず入れることで、近隣ユーザーの検索にヒットしやすくなります。
■フェイスブックとInstagramの連携
フェイスブックとInstagramを連携しておくのも重要です。
■ 店頭での取り組み
- レジ横にQRコード(InstagramやGoogleのレビュー)を置く
- チラシはイベント出店時に必ず持参する
- 取り置きや予約の対応を明確に(ベーグルヤはInstagramのDMを利用しています)
5. 心構え:背伸びをしないことが一番の強み
大手が近くにできたときに私が学んだのは、「背伸びしない」ということが結果的に強みになるということです。無理して規模を追わず、目の前の一つ一つの工程を大切にする。味を守ることに集中する。そうすることで、ゆっくりと確かな支持が生まれます。
「万人に好かれる店」ではなく、「私のベーグルの味を好きでいてくれる人」を一人ずつ増やす。
この感覚が、私の店を支えてくれています。
まとめと次のアクション
まずは次の3つが大切です。
- フェイスブックとInstagramの連携
- Instagramのジオタグ付き投稿を1回(本日のラインナップ)
- 次の出店イベント用にチラシを1種類作る
これらはどれも小さな行動ですが、継続することで確実に反応が出てきます。私は無口な性格ですが、味で選んでいただけるように日々ベーグルと向き合っています。あなたの小さなお店も、同じように味を軸に積み重ねていけば、必ず人に届きます。


