おいしいパン作りのコツ

ライ麦粉と全粒粉はどう違う?現役パン職人がその違いを詳しく解説!

ライ麦粉と全粒粉どう違う?

パン作りにハマり始めると、目にするようになる「ライ麦粉」「全粒粉」

でも、「どう違うの?」
「どっちを使えばおいしいパンが作れるの?」
と迷う方も多いのではないでしょうか。

今回は、日々パンを焼き続ける現役職人の視点から、それぞれの違いと魅力を、わかりやすく丁寧にご紹介します。

ライ麦粉と全粒粉の違いとは

やや灰色がかったきめの細かいライ麦粉と、やさしい茶色の全粒粉

見た目も全然違いますね。

ベーグルヤのベーグルにも使用していますが、全粒粉を使った生地はナッツと好相性なので、主にクルミの入ったベーグルに使用しています。

ライ麦配合の生地よりはさっくりとした食感で、粘りが少なくサッパリとしている印象です。

それに比べライ麦配合の生地はもっちり感が強く、きなこやあんこなどの和風のフィリングに適していると思います。これもライ麦の粘性のおかげですね。

ただライ麦は個性が強いので配合しすぎると酸味が強く出てしまうので注意が必要です。自分好みの配合を見つけるまではトライ&エラーの繰り返しです。

ベーグルは目の詰まった気泡を作らない生地を目指していますので、ライ麦の特性はとても適していますが、ベーグル以外のパンを焼く場合は配合のパーセンテージを低めに設定しないと、グルテン膜を形成せずガスを保持しないので、パンが膨らまなくなってしまいます。

ライ麦粉

ライ麦粉は、ライ麦という穀物を製粉して作られる粉で、やや灰色がかった色と独特の香り、ほのかな酸味が特徴です。小麦粉に比べてグルテン(弾力のもとになるたんぱく質)が少ないため、生地は粘りが少なく、ずっしりとした仕上がりになります。ドイツの黒パンやロシアのライ麦パンなどに使われ、食物繊維やミネラルも豊富で、健康志向の人にも人気があります。パンだけでなく、クラッカーやクッキーなどにも使われます。

全粒粉

全粒粉は、小麦の表皮・胚芽・胚乳をすべて粉にしたもので、精製された小麦粉よりも栄養価が高いのが特徴です。食物繊維、ビタミンB群、鉄分、ミネラルが豊富に含まれており、香ばしい風味とややざらついた食感があります。パンやクッキー、パスタなどに使われ、健康志向の食材として人気があります。ただし、グルテンの含有量はある程度あるものの、通常の小麦粉に比べて生地が重くなりやすいため、他の粉と混ぜて使われることも多いです。

全粒粉は挽き方により色々な細かさで販売されています。

この全粒粉(手前)は細引きなので、さらさらとしています。

パンに配合して焼くと、細引きなので、舌触りが比較的なめらかで、口当たりも良く、全粒粉特有のざらつきは軽減されています。香ばしく風味豊かで、食物繊維が多く含まれたヘルシーなパンが焼き上がります。

ただし、小麦の表皮や胚芽が含まれているため、生地はやや重めで目が詰まりやすく、ふくらみも小麦粉100%に比べて控えめになる傾向があります。

発酵力を保ちつつ軽さを出したい場合は、強力粉とブレンドして使うのが一般的です。たとえば、全粒粉を20%程度配合すると、風味と膨らみのバランスが取りやすくなります。

ではもう少し詳しく、ライ麦粉、全粒粉の特性について掘り下げていきたいと思います。

ライ麦とは?

ライ麦は、小麦とは別の穀物で、寒冷地でも育つたくましい植物。ドイツや北欧では主食のようにライ麦パンが親しまれており、食文化の中に深く根付いています。

ライ麦粉の特徴

  • 香りが強く、ほんのり酸味がある
  • タンパク質は存在するものの小麦のグルテニンやグリアジンとは性質が違い、グルテンを形成しない。よってグルテンの膜でガスを包み込んでふっくらと仕上がるパンとはちがい、重く、もちもちとした食感になる。
  • ライ麦粉の特性として、ペントサン(ペントースという五単糖で構成される高分子の炭水化物を含んでいますが、小麦デンプンはブドウ糖六単糖)です。ライ麦パンの製パン時にはペントサンの吸水性が非常に高いためにパン生地がべたべたと柔らかくなり、扱いにくくなります。発酵や焼成にひと工夫が必要な、中・上級者向けの素材だと言えます。

ライ麦パンの代表選手 プンパニッケルとは?

~ドイツ発・ずっしり重厚なライ麦パンの魅力~

◆ プンパニッケルとは

「プンパニッケル(Pumpernickel)」は、ドイツ西部・ヴェストファーレン地方生まれ。
粗挽きの全粒ライ麦(シュロット)を、低温で16〜24時間じっくり蒸し焼きにする、伝統的な製法で作られます。

この手間ひまこそが、あの独特な“黒くて濃厚なパン”を生み出す秘密なんです。

◆ プンパニッケルの魅力
比較項目 プンパニッケル 一般的な食パンなど
主原料 粗挽きライ麦 精製小麦粉
製法 長時間蒸し焼き(100℃以下) 高温で短時間焼成
発酵 自然発酵(サワー種) ドライイーストが主流
食感 しっとり・ぎゅっと詰まっている ふわふわ・軽やか
黒〜こげ茶色 白〜きつね色
◆ なぜこんなに黒くて重たいの?

黒さの理由は「焦げ」ではなく、ライ麦の糖分がゆっくりカラメル化(メイラード反応)するため
砂糖を加えなくても、噛むほどに自然な甘みを感じられます。

また、グルテンが少ないため膨らまず、ずっしりとした密度の高い仕上がりに。そのため、プンパニッケルは薄くスライスして食べるのが定番です。

サワー種を多く使用しているのでpH値が下がり、若干ですがカビの生えにくいパンとなります。

水分を多く含むため、数日は常温でしっとりとした食感を楽しむことができます。


◆ 食べ方いろいろ、楽しみ方いろいろ
  • オープンサンドで楽しむ
    スモークサーモン、ハム、クリームチーズなど、塩気のある具材と好相性。
  • ワインやチーズと
    酸味と甘みがあるので、赤ワインや熟成チーズとの相性も抜群です。
  • 朝食にもぴったり
    ナッツやドライフルーツをのせて、栄養たっぷりの一皿に。

◆ 名前の由来は…まさかの「悪魔のおなら」!?

「Pumpernickel」は、

  • 「pumper」=おなら
  • 「nickel」=悪魔、小鬼
    からきているという説も。
    かつて「消化に悪いパン」と誤解されていた名残ですが、実際は食物繊維が豊富で腸にやさしいパンです。

もはやパンと呼んでもいいものか・・・とっても個性的なパンで、好き嫌いが分かれると思います。でも一度食べてみてください。

ライ麦パンはなぜダイエット向きなの?

ライ麦パンは、ヘルシー志向の方にも人気。その理由は主に4つあります。

1. 食物繊維が豊富で腹持ちがいい

少量でも満足感があり、間食を防ぐのに効果的。
とくにプンパニッケルは、白パンの2~3倍の食物繊維を含みます。

2. 血糖値が上がりにくい(低GI食品)

血糖値の急上昇を抑えることで、脂肪がつきにくくなるのもポイント。

パンの種類 GI値(血糖上昇度)
白パン 約85(高GI)
ライ麦パン 約50〜58(中〜低GI)
3. よく噛む=食べ過ぎ防止に

ライ麦パンは噛みごたえがあり、自然とゆっくり食べる習慣が身につきます。

4. 栄養価が高い
  • マグネシウム:代謝や筋肉の働きをサポート
  • ビタミンB群:糖質・脂質の代謝に不可欠
  • 鉄・亜鉛:ホルモン・免疫・貧血対策に

ライ麦パンは小麦のパンよりはダイエットに適している。でも注意点も

注意ポイント 内容
カロリーは高め 高密度なので、少量でもエネルギーがしっかりある
加工品に注意 「ライ麦入り」と書かれていても、実際には小麦ベースだったり、砂糖や油脂が多いことも
適量が大切 どんなに体に良くても、食べすぎはNGです

ライ麦パンは こんな人におすすめ

  • 白パン・菓子パンを減らしたい
  • 血糖値コントロールを意識している
  • 間食や食べ過ぎを防ぎたい
  • 腸内環境を整えたい

「パンが食べたいけど、ダイエット中で…」
そんな方には、ライ麦パンもいいですね。
砂糖や油脂が少ないシンプルなタイプを選んでみてください。


全粒粉とは?

全粒粉は、小麦の表皮・胚芽・胚乳すべてをまるごと粉にしたもの
精製された小麦粉と比べて、栄養や風味がぐっと豊かです。

上が細引き全粒粉、下がグラハム粉。この中間に粗挽き全粒粉というものもあり、全粒粉は挽き方によって様々な個性が生まれます。

細引き粉ならパンに配合しても、ほどよい口当たりに仕上がりますが、粗挽きならより一層野性味にあふれたパンになります。ざらざらとした食感も魅力的です。

グラハム粉はクッキーなどによく使われますが、パンにする場合はお湯などで一度ふやかしてから配合するなど工夫が必要です。そのまま入れてしまうとガサガサ、カリカリとした口当たりとなり、おいしくありません。

全粒粉の特徴

  • 香ばしく、噛むほどに旨みが出る
  • グルテンを含むため、パン作りがしやすい

◆ 全粒粉を使った代表的なパン:カンパーニュ

**カンパーニュ(Pain de Campagne)**は、フランスの“田舎パン”。
全粒粉やライ麦粉をブレンドし、自然酵母や長時間発酵で仕上げる、滋味深いパンです。

カンパーニュの楽しみ方

  • 厚めにスライスして、バターやジャムでシンプルに
  • 軽く焼いてスープのお供に
  • タルティーヌ(オープンサンド)にもぴったり

ライ麦と全粒粉の違い、まとめ

比較項目 ライ麦 全粒粉
原料 ライ麦 小麦
味わい 酸味があり濃厚 香ばしくコクがある
グルテン量 少ない(発酵に工夫が必要) 含まれる(扱いやすい)
食感 重くてしっとり モチモチ+ほどよい弾力
栄養価 食物繊維・ミネラルが豊富 食物繊維・ビタミンB群が豊富
難易度 やや高め 初心者でも挑戦しやすい

パン作り初心者なら、まずは全粒粉から

全粒粉は、いつものレシピに少し加えるだけでも、風味がアップして“本格感”が出せます。

ライ麦は、発酵や配合に工夫が必要ですが、酸味や奥深い味わいに惹かれる方にはぜひ挑戦してほしい素材です。

全粒粉は“香ばしさ”、ライ麦は“深いコクと酸味”。
両方をブレンドして、自分好みの味を探すのもパン作りの醍醐味です。


ライ麦と全粒粉、それぞれの粉が持つ個性を知れば、パン作りはもっと楽しくなります。
「今日は軽やかに」「今日は濃厚に」と、気分や食べ方で使い分けてみてください。

自分だけの“ベストな粉のバランス”、ぜひ探してみてくださいね。

 

タイトルとURLをコピーしました