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ベーグルのルーツをたどる旅:ベーグルはどこの国のパン?
ベーグルは、今やカフェやベーカリーで定番の存在。もっちりとした食感と丸い形が特徴で、日本でもすっかりおなじみとなりました。でも、「ベーグルってどこの国のパンなの?」「どうしてこんなに人気なの?」と、ふと疑問に思ったことはありませんか?この記事では、ベーグルの発祥や宗教的背景、アメリカへの渡来、日本でのブーム、そして現在韓国で巻き起こっているベーグル旋風まで、じっくりとご紹介します。
ベーグルの起源、発祥地はどこ?
ベーグルの発祥の諸説
ベーグルの起源については複数の説がありますが、もっとも広く知られているのは17世紀のポーランド説です。1683年、オーストリアの王を讃えるために作られたという記録が残っており、このときに馬のあぶみに似せた形が「ベーグル(Bügel)」と呼ばれるようになったとも言われています。
さらに、ポーランドのユダヤ人コミュニティの中で宗教的な意味を持つパンとして独自に発展したとする説も有力です。
また、トルコを中心とするオスマン帝国時代に食べられていたリング型のパン「シミット」との類似性から、ベーグルのルーツの一部がシミットにある可能性を指摘する研究者もいます。
元祖ベーグル「オブヴァジャネック」について
中世のユダヤ人コミュニティで食べられていた「オブヴァジャネック」というパンが、現代のベーグルの原型とされることがあります。ポーランドのクラクフ名物のObwarzanek(オブヴァジャネック)は、Obwarzanek krakowski(クラクフのオブヴァジャネック)と呼ばれ600年もの歴史があります。これは小麦粉、塩、水だけを使ったシンプルなパンで、発酵後に茹でてから焼くという製法も現在のベーグルと非常によく似ています。形状や食感も近く、「ベーグルの祖先」として知られています。
ベーグルと宗教 ユダヤ人との関係
宗教的意味を持つパンとしてのベーグル
ユダヤ人コミュニティにおいて、ベーグルは単なる食べ物以上の意味を持っていました。安息日(シャバット)やユダヤ教の祝祭日には、特定の儀式食としてパンが重要視されます。ベーグルはその中でも、事前に茹でてから焼くという独自の製法と、保存性の高さから重宝されました。
また、そのリング状の形には「循環」や「永遠」を象徴する意味合いが込められ、人生の節目や祝い事の際にふさわしいとされていたのです。このようにして、ベーグルは宗教的・文化的な意味を帯びながらユダヤ人の生活に根付いていきました。
ユダヤ教の規律がもたらした材料の変化
ユダヤ教の戒律の中には、「親と子を一緒に煮てはならない」という規定があります。これは、動物の肉(子)と乳製品(親)を同時に調理・摂取しないという宗教的ルールであり、食材の選び方にも強く影響しました。
その結果、ユダヤ人のベーグルには卵やバター、油などの動物性由来の食材を使わないスタイルが生まれました。こうした制限が、現在のシンプルな材料構成──小麦粉、水、塩、酵母──を特徴とするベーグルの基礎となったと考えられています。
ベーグルは、東欧のユダヤ人コミュニティと深く関わってきました。ユダヤ教では、安息日や祝祭日に特定のパンを食べる習慣がありますが、ベーグルもその中に含まれていたとされています。
ベーグルがヨーロッパからアメリカへ
19世紀から20世紀初頭にかけて、多くの東欧系ユダヤ人がアメリカに移住しました。その際に、彼らの伝統食としてベーグルも一緒に持ち込まれました。
ニューヨークを中心としたユダヤ人コミュニティでは、家庭で作られたベーグルが徐々に商業的にも販売されるようになり、ベーグル専門のベーカリーが登場します。1920年代には「Bagel Bakers Local 338」という職人組合も設立され、職人の技術が標準化されていきました。
アメリカでのベーグルの位置とは
アメリカでの歴史
アメリカでは、1970年代以降にベーグルが急速に一般消費者に広まります。それ以前、1920年代にベーグル職人の組合が結成されていたにもかかわらず、長い間ユダヤ人コミュニティ内で消費される限定的なパンにとどまっていました。その理由の一つは、製造工程が手作業で複雑だったこと。また、当時のアメリカ人の食文化において、異文化的なパンへの関心が低かったことも影響しています。
さらに、ベーグルは日持ちが短く、流通の課題もありました。しかし、1970年代に入り冷凍食品技術が進化し、大量生産・長期保存が可能になったことで、スーパーマーケットを通じて一般家庭に広く浸透するようになりました。
さらに、クリームチーズとの相性の良さが注目され、「ベーグル+クリームチーズ+スモークサーモン」の組み合わせは、今やアメリカの朝食定番メニューの一つです。ニューヨークやロサンゼルスのデリでは、このスタイルが不動の人気を誇っています。
アメリカから日本へ
日本で初めてベーグルを売った人
日本でベーグルが登場したのは1990年代と比較的新しく、最初に商業ベースで販売したのは「ジュノエスクベーグル」と言われています。彼らはニューヨークスタイルのベーグルを日本人の口に合うようにアレンジして提供し、一気に注目を集めました。現在はジュノベーグルとなっています。
最近では、ベーグルの食べ放題ランチが人気のようです。いろいろな種類を試せるので嬉しいですね!食べすぎ注意ですが・・・
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健康志向やナチュラル志向が高まっていたこともあり、油脂や砂糖をあまり使わないベーグルは「ヘルシーなパン」として人気を得ていきます。
現在の日本では、ベーグル専門店も数多く存在し、冷凍や通信販売でも簡単に入手可能となっています。特に近年は、もちもち食感の国産小麦を使用したベーグルや、発酵バターやスパイスなどを加えた創作系ベーグルが若い世代に人気です。
さらに、InstagramやYouTubeなどSNSの影響で、「映えるベーグル」や「おしゃれなベーグル朝食」が広がり、ますます注目度が高まっています。
ただいま韓国で大ブームとなっているベーグルについて
韓国では2023年頃から“ニューヨークスタイルベーグル”が大ブームとなり、ソウルを中心に専門カフェが続々とオープンしています。例えば、話題のカフェ「London Bagel Musium(ロンドンベーグルミュージアム)」
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とても人気で、多くの方がここに足を運ぶため、平日でも朝から行列ができています。ベーグルの種類もたくさんあります。「 プレーンベーグル 」や「 ガーリックベーグル 」「 トリュフバターベーグル 」などのシンプルなベーグルだけでなく、「 ベーコンジャムポテトベーグルサンドイッチ 」といったボリューム満点のベーグルまでバリエーション豊かです!SNSでも頻繁に取り上げられています。
特徴は、もっちりした食感としっかりとしたボリューム、そしてクリームチーズやスプレッドをたっぷり挟んだスタイルです。これらのカフェでは、写真映えする断面や多彩なフレーバーが若者の間で話題となり、韓国のカフェ文化との融合が加速しています。
SNSを通じて「ベーグル+韓国カフェ文化」の融合が人気を呼び、若者を中心にベーグルが朝食やランチの定番として急速に定着しています。
日本でも韓国発のベーグルスタイルを取り入れるカフェが登場し始めており、今後さらに日韓のベーグル文化が融合していく可能性もあります。
ベーグルのルーツをたどる旅:ベーグルはどこの国のパン? まとめ
ベーグルはどこの国のパン?──そんな素朴な疑問から始まった今回の記事では、ベーグルの深い歴史と背景を掘り下げました。起源は17世紀のポーランド・クラクフとされ、ユダヤ人の間で宗教的な意味を持つパンとして発展。ユダヤ教の食規律により卵や油を使わない独特の製法が守られ、親から子へと受け継がれてきました。
その後、移民の波に乗ってアメリカへ渡ったベーグルは、当初はユダヤ人コミュニティ内だけで流通していましたが、1920年代以降、移民2世たちが起業し始めたことで徐々に広まり、冷凍技術やスーパーマーケットの普及とともに一気に全国区の人気商品となっていきます。1970年代にはニューヨークを中心に「ニューヨーク・ベーグル」として確固たる地位を築きました。
やがてその人気は日本にも波及。1990年代に初めて専門店が登場し、2000年代以降には“もちもち食感”や“低脂質”の特徴がヘルシー志向の若者に支持され、現在ではさまざまな店で売られています。近年では韓国でもブームが起きており、進化系のビジュアル系ベーグルがSNSを賑わせています。
この記事では、そんなベーグルの歴史的背景から現在のトレンドまで、実例やエビデンスを交えながらわかりやすく解説しました。あなたの一口が、何百年の歴史につながっているかもしれません。