イーストとは?天然酵母との違いは?現役パン職人が教える発酵の科学

おいしいパン作りのコツ

イーストって?

結論 イーストは微生物

微生物の中でもパンを発酵させるのに優れた特性をもつ菌です。

香ばしいパンの香りをかぐととても幸せな気持ちになります。

パンが好きだという人も多いと思います。

しかしそんなパンを膨らませてくれるイーストの実態については

実はそれほど知られていません。

これはイーストが身近な存在ゆえ、なのかもしれません。

ここではこの「イースト」についてお話していきたいと思います。

※この記事にはPRが含まれています。

イーストも天然酵母と同じ微生物

生物は、動物、植物、菌類に大別されます。

菌類はさらに真核生物と原核生物(細菌)に分かれます。

酵母菌や紅麹菌はこの真核生物に分類されます。

生物学では酵母菌を「酵母Yeast」と呼びます。

イーストというのは

この中で人間に有益な働きをする微生物です。

このイーストには実は何百もの種類があると言われています。

その中でももっともパン作りに適した

「サッカロミセス・シルヴィシエ」という種が

一般的に使用されています。

肉眼では見えない円形、

もしくは楕円形の球状で10μ(ミクロン)程度の大きさ。

一個の独立した生命体なのです。

1gの生イーストの中におおよそ100~200億個の細胞が存在します。

イースト菌のすみかは地球上ありとあらゆるところ。

リンゴやブドウの表皮や、枯草にも棲みついています。

昨今、天然酵母のほうが健康志向の方には選ばれていますが、

イーストは天然酵母となんら変わりない、

とても優秀な微生物なのです。

イーストの種類 3種

生イースト

現在市販されているのは国内産のイーストをパン製造用に純培養したもの。

日本のイースト菌はインベルターゼというショ糖分解酵素が多く、

生地中の砂糖をブドウ糖と果糖にいち早く分解し

イースト自身の栄養源とすることで発酵を促進させます。

どんなパンでも焼けますが、

菓子パンやスイートロールに向いていると言えます。

ドライイースト

ドライイーストは、ヨーロッパから輸入されるものが大半を占めています。

生のイーストを製造の最終段階で熱風によって乾燥させたものです。

発酵産物の香味成分がよくパン生地の風味がよくなります

ヨーロッパのリーンな硬焼きパンに適したイースト菌は、

インベルターゼ(ショ糖分解酵素)と

マルターゼ(麦芽分解酵素)両方を持っていますが、

マルターゼ活性の方がかなり優勢で、

砂糖を含まない生地と相性が良いのです。

2~3ミリの粒状なので、

40℃ほどのぬるま湯に砂糖を加えたもので予備発酵させてから

使用する必要があります。

インスタントドライイースト

ご家庭でもよく使われていると思います。

生イーストをドライイーストよりも短時間で乾燥させ、

乳化剤を加えてできるインスタントドライイースト。

ドライイーストよりもさらに細かい粒状で、予備発酵はいりません

発酵力が強く、初心者でも簡単にパンを作ることできます。

無糖生地用と加糖生地用があり使い分けが可能となっています。

インスタントドライイースト3種類 特徴とその使い分けとは

ではここではどんなお店でも売っている、

扱いやすいイーストをご紹介します。

私がパンを焼くときに使用しているのは、赤サフです。

赤サフ

糖分が12%以下の低糖生地に向いています。ビタミンCを含んでいるので

グルテンを強くする作用でしっかりとした食感、
安定したボリュームのパン生地を作ることができます。

失敗しにくいので、初心者の方には使いやすいと思います。

青サフ

糖分が12%以下の低糖生地向き。

こちらはビタミンCを含んでいないため、
生地がゆるみやすく扱いが多少難しくなると思います。
でもその分、出来上がりは柔らかい食感です。

中級者および添加物(ビタミンC)が気になる方は

青サフがいいかも。

金サフ

糖分が5%以上の多糖生地に向いています。

金サフもビタミンCを含んでいます。
菓子パンにはこちらかも!

もし、甘いのも甘くないものも

両方作るのなら赤サフが使いやすいと思います。

私はどちらも赤サフだけで焼いています。
たしかに、卵やお砂糖バターなどが入れば入るほど
発酵はしにくくなりますので、

金サフと赤サフの二種類を使い分けてみても

いいと思います。

イースト自動投入機能のついたホームベーカリーが
最近では主流ですね。
インスタントドライイーストと強力粉があれば、
簡単に焼きたてパンが食べられるのは幸せですね。

天然酵母とは

パンを発酵させるために特定した単一の菌を

工業的に純粋培養したのがイーストです。

それに対して、不特定多数の雑多な菌を培養したものが

天然酵母と呼ばれています。

私のお店ではホシノ天然酵母を使用しています。

香りも良く、小麦の本来のうま味を引き出してくれます。

非常に優秀な天然酵母で、

安定したおいしさをお客様にお届けすることができています。

市販されている天然酵母 3種 その特徴を解説

お店のベーグルを生み出すにあたって何度も試作を繰り返してきました。

その経験に基づき、それぞれの天然酵母のを特徴をご紹介したいと思います。

ホシノ天然酵母

有限会社「ホシノ天然酵母パン種」の製品。

お米由来の酵母で、国産米、国産小麦、麹や水を用いて

培養・製品化した醗酵種です。

お米由来なのでしょうか。

ふわふわボリュームのあるパンというよりは、

むっちりもちもちの仕上がりで、しっとりとしています。

噛みしめると、豊かな小麦の香りと優しい甘さが楽しめます。

私のお店では丹沢酵母を使っています。

こちらは神奈川県の丹沢山塊で採取された酵母で作ったパン種で

ホシノ天然酵母パン種と比べて発酵力が強いです。
どちらかといえばすっきりとした味と風味が特徴です。

そのほかにもフランスパン種というものもあり、

リーンなパンを焼きたいという方はこちらもおすすめです。

このように種類が豊富で、自分の焼きたいパンの種類によって選べるところが

ホシノ天然酵母のいいところなのですね!

白神こだま酵母

株式会社「サラ秋田白神」が販売する製品。

世界自然遺産「白神山地」のブナ原生林から採取し、

分離培養された酵母です。

添加物を一切加えていません

乳酸菌の混入がなく、

一般的な天然酵母にある酸味はほとんどないように

思います。

白神こだま酵母は、

種起こしが不要でぬるま湯に溶かすだけで使用できます。

ホシノ天然酵母は種起こしが必要なので、

それと比べるとこれは手軽!

天然酵母として市販されている酵母の中でも、

それが白神こだま酵母の最大の特徴だと思います。

白神こだま酵母はトレハロースを多く含む酵母で、

パンにほのかな甘さをプラスし、しっとりとした食感に仕上げます。

(トレハロースは砂糖の40%程度の甘さで、保水性に優れ、

でんぷんの老化抑制にも効果がある天然糖質です。)

ほんのり甘みを感じるしっとり食感のパン。

ホシノ天然酵母と比べるとやや

ボリュームが出やすいと思います。

あこ天然酵母

有限会社「あこ天然酵母」が販売する製品。

ホシノ酵母の創始者のもとで天然酵母作りに長年携わり、

日本古来の醸造技術を学んだ職人さんによって

生み出された天然酵母。

安定した発酵力と、すっきりとした味わいで、

天然酵母によくある酸味はでません。

こちらは生種起こしが必要ですが、

手間暇かけた分、

ふっくらとしたやわらかいパンを作ることができます。

まとめ

イーストも天然酵母の一種だとわかっていただけたと思います。

イーストは2時間もあればおいしいパンが焼けます。

手軽で嬉しいですね。

天然酵母は種起こしや予備発酵が面倒に思えるかもしれませんが、

目に見えなくても、酵母さん達がそれぞれにいい働きをしてくれるので、

私たちは酵母さんたちにおまかせして、

それを待つ間に他のことをしていればいいのです。

自然の恵みと力を合わせて、おいしいものを手にいれる。

これこそが本当の健康の秘訣なのではないでしょうか。

天然酵母は市販のものではなく、自家製酵母も人気があります。

自家製酵母の記事も後日、書いてみたいと思います。

ああ、パン作りって奥深い。とっても楽しい!

こちらの富澤商店さん。
お店の材料をよく仕入れさせていただいているのですが、
1919年創業の老舗。
神戸阪急にも店舗が入っているので、皆さんもご存じかと思います。
製菓製パン材料がいろいろ揃います。
品質も確かで、いつも安心してお取引させていただいています。

<div>

よかったらクリックよろしくお願いします!
ブログランキング・にほんブログ村へにほんブログ村

タイトルとURLをコピーしました