リーンなパンとリッチなパン どんなもの?
「リーン」なパン、「リッチ」なパン・・・
パン作りをしているとこの言葉をよく耳にします。
この記事では「リーン」「リッチ」ふたつの違いと
仕上がりに影響を与える副材料について解説します。
リーンなパン
リーンと英語で「簡素な」「脂肪のない」などといった意味で、
リーンな生地とは小麦粉・イーストなどの酵母・塩・水の
基本的な材料で作られる油分の少ないシンプルなパンのことを指します。
最低限な材料で作られているからこそ「焼成時の香ばしい香り」や、
「発酵による風味」を感じることができます。
そのシンプルな食事パンは惣菜を引き立て、
ヨーロッパの国々、特にドイツやフランスでは主食とされています。
日本で言う白ごはんのような存在なのですね。
リーンなパンに分類されるパン
- バゲット
- パン・ド・カンパーニュ
- チャバタ
- プンパーニッケル(ライ麦のパン) など
リッチなパン
リッチなパンは、基本材料である小麦粉・酵母・塩・水の他に、
油脂・砂糖・卵・乳製品の副材料を使用したパン。
柔らかくふっくらと焼き上がっています。
リッチなパンに分類されるパン
- ブリオッシュ
- クロワッサン
- あんパン
- クリームパン など
仕上がりを左右する副材料の秘密
リッチな生地には、小麦粉、イースト(発酵させるための酵母)、塩、水以外に
油脂、砂糖、卵、乳製品が含まれています。
この副材料によって、パンは柔らかくしっとりきめ細かくなります。
その働きの秘密とはいったい何なのでしょうか?
ここでは、油脂(バター、ショートニング)、卵、乳製品について
詳しく解説していきます。
もう一つの副材料である砂糖について知りたい方はこちらの記事を参考にしてください。
油脂の役割
まず、第一に油脂類はパンにコクを加えておいしくしてくれます。
特にバターなど強い香りを持つものは
直接できあがりのパンの味に反映されます。
個性的なパンを焼きたいときには
オリーブオイルを利用してみるのもいいですね。
油脂というものは外部からの力で自在に形を変える性質があるので、
均一に油脂の練りこまれた生地は
その性質を利用してよく伸びるようになります。
良く伸びるようになるとボリュームが出て、
ふっくらと香ばしく焼きあがるというわけです。
バターとショートニングの違いは?
バター
バターは牛乳を原料とした動物性油脂です。
バターを使用するととコク深く贅沢な風味に仕上がります。
乳糖や乳脂肪、色素などが直接、風味や味や焼き色に影響します。
焼き上がりにリッチな風味を求める場合にはバター、
生地の伸展性は求めるが素材の邪魔になってほしくない場合は
無味無臭のショートニング、
といったように使い分けるといいですね。
パンには無塩バター?有塩バター?どちらを使うの?
一般的には無塩バターを使用します。
その理由は、パン生地の塩の量が増えてしまうからです。
しかし、下の表からもわかるように、
有塩バターに含まれる塩の量は、100gに対して1.4gです。
栄養成分表示(雪印北海道バター成分表から引用)[雪印メグミルク(株)調べ]
100g 当たり |
|
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20gに換算すると0.28g。
ほんとに微々たるもの。
さあ、今からパンを焼くぞ!と意気揚々と腕まくり。
だけど、その時冷蔵庫に「有塩バターしかないっ・・・」となってしまった。
でもあきらめないでください。
有塩バターしかない時は塩の量を気持ち程度減らせばいいと思います。
それでもパンはおいしく焼けますよ。
デニッシュ系のパンは有塩バターはNG
なぜなら、デニッシュ系のパンはバターをパン生地に折り込むので、
塩分バランスが崩れてしまいます。
クロワッサンやパイ生地は、生地をサクサクに仕上げるため
大量のバターを生地に折り込んでいます。
折り込んで伸ばして畳んで、という作業を繰り返して
バターと生地を層にしていくのです。
塩の役割の中に生地を引き締める効果があります。
バターの分量が多いと塩の量も増えてしまう。
それを気にしてパン生地に加える塩の分量を極端に減らす調整をすると
張りが出ず、生地がベタベタになってしまいます。
そうなると焼き上がりのボリュームにも影響してしまいます。
塩についてもう少し詳しく知りたい人はこちらをご覧ください。
私はよつ葉のバターを愛用しています。
ショートニング
ショートニングは主にパンやお菓子などに使われる食用油脂です。
精製した油に水素ガスや窒素ガスを添加して製造されます。
主に大豆油や菜種油などを原料とする植物性の油脂です。
ショートニングを使うことで、小麦粉を練る際に作られる、
タンパク質(グルテン)の膜の間に油脂が入り込み、
パン生地がしなやかになります。
食パンを焼くときにもよくショートニングは利用されますが、
上手に窯のび(縦に伸び上がる力)させるには、しなやかなグルテンが大切。
油脂はその助けとなるのですね。
・ふっくらと焼き上がる
・軽くてやわらかな口当たりになる
・水分が逃げにくくなるためかたくなりにくい
このような効果があります。
無味無臭のため素材の風味を邪魔しません。
卵の役割
パン作りにおいて、卵はよく使われる副材料の一つです。
卵を加えることでパンの栄養価が向上し、風味やコクが増します。
水分が逃げるのを防ぎ、パンが硬くなるスピードを遅らせてくれます。
また焼き色も美しく仕上がります。
卵白と卵黄の違い
卵黄
卵には、乳化作用があり、水分と油脂が均一に混ざり合わせられます。
マヨネーズを思い浮かべていただくとわかりやすいです。
卵黄にはレシチンという乳化剤が含まれており、生地の中で油脂と水分を混ぜ合わせ、
均一にしてくれます。
生地はより滑らかで扱いやすくなり、成形時の作業は容易になります。
卵白
約90パーセントが水分で、そのほかは主に水溶性のタンパク質です。
このたんぱく質は加熱すると固まる性質があるため、膨らんだパン内で気泡を支え、
しっかりとした骨格に仕上げます。
腰折れしない生地を作り出すという利点があるのですが、
その反面、卵白を入れることによって焼きあがりの食感がパサパサするので、
卵白単体では使用しないことがほとんどです。
乳製品の役割
パンにスキムミルクや牛乳を入れるのはなぜなのでしょうか?
それはその昔、パンの味をよくするために水の代わりに牛乳を用いたことが
始まりだと言われています。
では乳製品を加えることでどんなメリットがあるのでしょうか。
栄養価があがる
そもそも小麦粉は必須アミノ酸の「リジン」が最も不足しているせいで、
パンのアミノ酸組成バランスというものはあまりよくありません。
その「リジン」が豊富に含まれている乳製品を使用することで、
必須アミノ酸のバランスは改善され栄養価があがるのですね。
美しい焼き色になる
そもそも酵母菌は糖分をエサとして利用する際に、自身が持つ酵素の力を使います。
砂糖の入らないパンでは麦芽糖分解酵素(マルターゼ)が麦芽糖を分解し、
砂糖の入ったパンではショ糖分解酵素(インベルターゼ)がショ糖を分解し、
ブドウ糖や果糖を作り出します。
しかし酵母菌は乳糖分解酵素(ラクターゼ)を持っていないため、
乳製品を分解することは出来ないのです。
そのため焼成時に分解されずに残っている乳糖がアミノ酸と結合し
「メイラード反応」の材料となり、より鮮やかな褐色の焼き色となるのです。
味の向上
乳製品を加えることでミルキーな風味を期待するのですが、
これは相当量入れない限り、はっきりと感じることは難しいです。
しかしメイラード反応で独特な香ばしさの成分が生成されますので、
パン屋さんから漂ってくる、あの心をくすぐるおいしいパンの香りを
生み出すことができます。
乳製品を入れるデメリット
生地を硬くする
スキムミルクは固形なので小麦粉と同様に水を吸う能力があります。
そのため同じ水分量で作るとスキムミルク無しの生地より硬くなります。
牛乳を利用する場合でも10パーセントは固形分、
残りが水分で90パーセントだと考えるので、
水と置き換える場合は10パーセント水分を増やさなくてはなりません。
常に気にするのは乳製品の中の固形分の重量なのです。
生地が硬いということは、内側からのガスを抑える力が強いということなので、
発酵時の膨らみにくさに影響します。
発酵を遅らせる
PHの変化を妨げて、発酵を遅らせてしまいます。
発酵の過程で、酵母菌が活性化するにつれ
パンのPHはどんどん弱酸性に傾いていくのですが、
乳製品はそのようなpHの変化を緩やかにする働きがあり、
発酵力の向上を抑えてしまいます。
生地の完成が遅くなる
乳製品を添加したときは、捏ね時間が少し長くとりましょう。
乳製品に含まれる固形分はパン生地の中ではグルテン形成の邪魔になります。
(乳製品に限らず、ドライフルーツなどを入れた時も同様ですが)
牛乳とスキムミルクの違いは
スキムミルクが使われることが多いのは、実用面で利点があるからです。
①より安価
②粉に添加できる
③保存期間が長い
④冷蔵保存しなくてもよい
⑤場所を取らない
といった理由でしょうか。
ただ、スキムミルクをしようするにあたって
注意しなければならない点もあります。
スキムミルクは吸湿性が高く、
非常にダマになりやすい食材なので計量後放置せず
なるべく早めに砂糖や小麦粉などと混ぜ合わせておくといいでしょう。
まとめ
このように副材料の性質や役割を知ることは、
自分のイメージするパンを焼くことにとても役立つと思います。
ぜひ色々なアレンジを楽しんでみてください!
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