塩の入っていないパンはまずい?現役パン職人が教える塩の役割・効果とは

おいしいパン作りのコツ

もしパンに塩を入れなかったら どうなるの?

塩の入っていないパン・・・

結論)私たちは「味がない」「おいしくない」と感じるでしょう。

パンを作る過程でも、やりづらさを感じるでしょう。

一つ、私の経験談をお話しさせてください。

以前に、糖尿病のお客様から依頼され

無塩パンを作った時の事です。

塩を全く入れないとやはり生地はべたつき

ボリュームを出すことが難しかったです。

塩は網目状になったパンのグルテンを強くしてくれます。

発生した炭酸ガスをしっかり蓄えてふっくらと膨らむのですから、

その原理からいけば当然のことなのかもしれません。

塩は発酵を抑制しますが、入っていない場合は発酵が進みやすく、

酵母が糖分をどんどん消費してしまいます

そのため色を付ける役割の糖分が少なくなるので、

できあがりの焼き色はとても薄くなってしまいました。

「味の方は・・・」というと、いつものパンに慣れている私には

何の味もしない・・・味気ない・・・と感じてしまいました。

塩が入ることで甘さが引き立ち、

パンの酸味を感じにくくしてくれていたのですね。

それでもご依頼のありましたお客様には、

たとえ塩が入っていなくても、

サンドイッチにしたり、お惣菜と合わせたり、

と喜んで召し上がっていただけましたので、

やりがいを感じたお仕事でした。

(★ただいま無塩パンの製造は中止しております。申し訳ありません)

発酵、味、焼き色、様々な面でパンの出来上がりに影響を与える

塩はやはりパン作りには欠かせない材料なのだと

身をもって感じました。

そこで、塩が製パンに与える影響について、

詳しく解説していきたいと思います。

パンに塩を入れる理由は?

 パンに味をつけるため

塩は、パンに欠かせない風味を出してくれます。

塩を入れることによって、対比効果で「パンの甘み」を引き出してくれます。

また、小麦粉に含まれるグルタミン酸やイノシン酸の酸味を感じにくくしてくれます。

パン生地を安定させるため

パン生地内に含まれているタンパク質の一種であるグルテンを引き締めて、

生地の腰を強くしてくれます。

パンのグルテンは網目状なのですが、

塩でその網目のつながりを強化します。

そのため塩を加えなければ生地がベタベタになります。

発酵にも時間がかかってしまいます。

酵素の活性を抑制するため

塩は「浸透圧」を上昇させ、微生物の働きを抑制する作用があります。

「浸透圧」を簡単に説明しますと、半透膜(小さな分子は通すけれど大きな分子は通さない膜)

で水分が区切られていると、濃度を一定に保とうとして水分が移動する力のことです。

濃度に差があると薄い方から濃い方に小さい水の分子が通り抜けて移動するのですね。

塩の場合でいうと塩分濃度の薄いところから濃いところへ水分子が移動していきます。

この原理がパン生地内の水分と酵母菌内の水分でも起こります。

塩を入れると酵母内から外へ水分が出て行きます。

すると酵母の働きが鈍くなります。

酵母が含むインベルターゼやチマーゼという酵素は

糖によって活性化しますが、それを塩によって適度に抑制し、

過発酵のトラブルを防ぎます

パン生地の菌の異常増殖の抑制・殺菌効果のため

パン生地の中で菌が増殖することを防ぎます。

パン生地の発酵では、酵母菌だけでなく乳酸菌の働きも重要な役割を担っています。

自家製酵母でパン作りをする時は、

種にするレーズンやりんごなどの果皮などに

元々付着していたものや

空気中から入り込むものなどを培養するのですが、

稀に発酵種や生地の管理が上手くいかず異常発酵を起こし、

乳酸や酢酸が出すぎて酸っぱくなりすぎることがあります。

塩で微生物の働きをほどよく抑制しておくことにより

このような異常発酵を防ぐことができます。

また、オーバーナイト法などでイーストの量をごく少量に減らした

発酵種を長時間発酵させる場合は、

酵母菌の数が少ないため雑菌繁殖のリスクが高くなります。

その時にも塩は殺菌という役割を担うのです。

以上のように塩はパン作りに欠かせない材料なのです。

どんな塩がパン作りに適している?

食塩、海水塩、藻塩、窯焚き塩、岩塩・・・

ひと口に塩といっても、実に様々な種類があります。

いったいどんなものがおいしいパンを作るのに適しているのでしょうか?

精製塩

原塩となる塩を溶解し塩化ナトリウムの濃度が99.55%以上になるように

精製したものです。

マグネシウムやカリウムなどのミネラルを含まず

さらさらしているのが特徴です。

一般的なご家庭で食塩として購入されているものです。

この塩は一般的にイオン交換膜製法で作られています。

イオン交換膜製法とは、海水の成分を陽イオンと陰イオンに分け、

陽イオンである塩化マグネシウムを集め濃縮する方法です。

苦みの素となる不純物が取り除かれ、塩化ナトリウムの濃度が高くなるため、

ストレートに塩味を感じることができます。

この食塩を用いて食パンを焼いてみました。

ここからは主観なのですが、

やはりミネラル成分がとりのぞかれているからでしょう。

スッキリとしていますが、

ふくよかなうま味というものの感じられないパンになってしまいました。

天然塩

自然の力でできた塩を採取したものや、

海水を天日や平釜などで蒸発させて作った塩のことを指します。

塩の本来の成分でもあるミネラルが豊富に含まれているのが特徴です。

国土の狭い日本では天日や平窯は難しいため、

海外で作られたものも多く販売されています。

日本の海水を使用しているのか、海外の海水に日本のにがりを混ぜているのか、

それはまちまちです。

もし自然塩を購入する場合は、

原材料や製法など自分の目で確かめることが大切だと思います。

気に入った自然塩を手に入れたら、

ぜひパンを焼いてみてください。

おいしいパンはおいしい素材から。

とくにシンプルなリーンなパンはストレートに材料の味を反映します。

パン作りにはミネラル豊富な自然塩をおすすめします!

私のお店では、「赤穂のあらなみ」を使用しています。

とてもまろやかでおいしいお塩だと思います。

 

赤穂あらなみ塩
『日本の古き良き味を後世に残す』を
コンセプトに誕生した商品です。
『赤穂あらなみ塩』は、自然に恵まれた赤穂で採れた塩を100%使用したこだわりの塩です。創業から変わらない伝統的な製法にこだわり、日本古来の塩のおいしさを味わってもらいたいと、職人たちの手によって丁寧に作っています。赤穂産のにがりをしっかりと含ませ、良い塩梅に調整したまろやかな味わいが特徴的。
おにぎり、焼き魚、漬物など毎日の料理にお使いいただけます。赤穂をはじめ、兵庫県内の多くのご家庭で愛用いただいている自慢の塩を、ぜひ味わってみてください。★こんな使い方がおすすめ→まろやかな味わいは、漬物にぴったり。梅干しや浅漬けなど、さまざまな漬物にご使用いただけます。特におすすめは梅干し。一緒に漬け込んだ赤ジソも乾燥させて、自家製のゆかりにすれば、具材を余すことなく味わえます。にがりの含有効果で食材に塩が付着しやすいため、盛り塩や魚の塩釜も簡単にお作りいただけます。
あらなみ塩|赤穂あらなみ塩 (こちらのサイトより、引用させていただきました。)

リーンなパンとリッチなパンについてはこの記事に詳しく書いています。

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