イーストフードって何?
塩化アンモニウム、塩化マグネシウム、グルコン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸カリウム(無水)、炭酸カルシウム、硫酸アンモニウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素ニアンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸―水素力ルシウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸三カルシウム、焼成カルシウム
イーストフード=生地改良剤です。発酵を促進し、生地を改良するための添加物で、
上記のように約16種類の化合物によって構成されています。
いろいろなメーカーが業務用に販売していますが、
化合物の割合がメーカーごとに違うので、効果も少しずつ違っています。
製パンにおけるイーストフードの役割は大きく分けて3つ。
①水の硬度を変える ②イーストの栄養となる ③グルテンの安定と強化をはかる
それではひとつずつ解説していきましょう。
水の硬度を変える働き
水の硬度とは水に含まれるカルシウムおよびマグネシウムイオンの量を
炭酸カルシウム量に換算してppmの値で表したものです。
含有量が多いほど硬水となります。
日本においては、純粋0ppm、軟水15~50ppm、やや硬水50~100ppm、
硬水100~200ppmという基準があります。
日本の水道水の9割弱が硬度50ppm前後のやや軟水~硬水あたりです。
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上の記事でも水の硬度については書いているので、読んでみてください。
パン作りにはやや硬水が適していて
硬水はパン生地中のグルテンの組織を引き締め、
パン生地の弾力を増します。
逆に軟水を使用するとグルテンの引き締めが不十分となり
パン生地はべたついてしまいます。
日本の水はやや軟水寄りですので、
炭酸カルシウムや炭酸マグネシウムの含まれている
イーストフードを添加することによって水道水を硬水に改良します。
そして生地中のグルテンを強化しパン生地のダレを防ぐのです。
特に食パンなどには、この硬水寄りの水を使用することが重要となります。
またフランスパンや固焼きパンにはやや軟水である日本の水道水でも問題はありません。
軟水を使うと生地のまとまりが遅くなるので、低速でゆっくりミキシングします。
そのためグルテンの引き出しも八分目とやや控えめとなり、
ボリューム主体ではなく素材の味や風味を十分引き出す事ができます。
この水の硬度を変えるために使用されるイーストフードで気になるのは、
炭酸水素ナトリウムと一緒に使用されることがある塩化アンモニウムです。
これはPH調整剤として一般には化学肥料に使用されていることが多いものです。
一度に多くの量をとってしまった場合、吐き気や嘔吐などを引き起こすといわれていますが、
実際には一日の許容量を上回る程大量に食べなければ心配はないと言われています。
厚生労働大臣が認めている食品添加物は指定制度というルールが定められています。
イーストの栄養となる働き
イーストフードに含まれている有機酸には硫酸アンモニウム、
リン酸アンモニウムなどがあります。
これらはイーストが生地の中で摂取しにくいため、アンモニア化合物の形で添加して栄養補給します。
特に糖分の少ないリーンなパン生地においては、生地中の糖分が欠乏してくるに従い
炭酸ガスの発生力が低下します。
この時にこのチッ素が活性化を助けてくれるのです。
他のカリウム、リン、カルシウムなど基本的な栄養素は小麦粉や水からでも摂取できるのですが、
チッ素においては添加して補う方法がとられています。
このリン酸塩は多くの食品などにも使われている食品添加物ですが、
体内で骨の破壊を促進する働きがあるため,
もし長期間食べ続けてしまったら
骨粗しょう症などの障害が起きるといわれています。
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グルテンの安定と強化を図る働き
酸化剤にはいくつか種類がありますが、現在日本で主流となっているのは
「アスコルビン酸」です。
ここで説明する「アスコルビン酸」は上記のイーストフードの16種類の中には
ありませんが、よく使われている食品添加物です。
購入したパンの裏側に「V.C」や「ビタミンC」という表記があるのを見たことがあると思います。
この酸化剤「アスコルビン酸」がグルテンにどう作用するかをここで詳しく説明します。
小麦というのは植物です。そのため毎年の収穫ごとに品質のブレが生じます。
そのため製粉段階で規格基準があり、品質は管理されています。
それでもいつも全く同じ状態の粉が手に入るとは限りません。
また挽きたての粉と何週間も熟成させた粉(エイジング)とでは、
パン生地の吸水量やミキシングや発酵にかかる時間まで違ってきます。
特に挽きたての若い粉は粉の酸化が未熟ですので、
生地にした時べたつく傾向があります。
小麦のエイジングとは:
製粉会社が小麦を製粉したあと、一定期間、粉を寝かせることをエイジングといいます。
この工程において、小麦に含まれる酵素の活性を落ち着かせ、粉に酸素を吸着させる効果(粉の酸化)があります。
エイジングをへた小麦粉は酸素をある程度含んだ状態となり、挽きたての粉に比べてグルテンが強くなる傾向にあります。
酸化作用のあるイーストフード(酸化剤)を添加すると、生地中のグルテンが補強されます。
グルテンは網目のように生地中に張り巡らされています。
一本一本のグルテンはアミノ酸と呼ばれるたんぱく質で構成されていて、
ところどころに含硫アミノ酸のシスティン(SH基と呼ばれる手)が存在します。
グルテン同士は酸素を仲介として、そのSH基という手を結びます。
その部分はS-S結合となり、単独で存在していたグルテンががっしりと補強されるわけです。
(システィン→シスチンに変化)
もちろん酸化剤がなくても生地中に存在する酸素によってSH基をS-S結合に変えることは可能です。
しかしこれだけでは全体の20%程度にしかなりません。
そこで酸化剤を添加し、50%くらいまで引き上げてグルテン同士のつながりをより強固にするのです。
グルテンのつながりが強固になると、パンは伸展性がまし、ガスの保持力がアップし、
大きく膨らみます。
イーストフードは体に悪いの?
ここまでで主なイーストフードの働きを3つ解説してきましたが、
みなさんが本当に知りたいのは、イーストフードが体に悪いのかどうか、
ということだと思います。
塩化アンモニウム、塩化マグネシウム、グルコン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸カリウム(無水)、炭酸カルシウム、硫酸アンモニウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素ニアンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸―水素力ルシウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸三カルシウム、焼成カルシウム
イーストフードは上記の約16種類を組み合わせて添加します。
こうして並べてみると実にたくさんの添加物がありますね。
もちろんベーグルヤのベーグルは完全無添加なので、
保存状態が悪ければカビも生えますし腐ります。
そのためお客様にはお早めに召し上がっていただけるようお願いしています。
こんなにたくさん添加物は種類がありますが、
その中で2種類以上組み合わせて添加すると「イーストフード」と一括表示できます。
それをされてしまうと何が使われているのか詳細は消費者にはわかりません。
食品添加物の中には不安要素が残るものもあります。
しかし、厚生労働省が認めている食品添加物は大量摂取しない限り、
安全性が確認されたものばかりです。
私が時々考えるのは、同じ食品ばかり毎日毎日食べ続けているのか?
その添加物が体の中に蓄積していくほど摂取しているだろうか・・・。
はたして自分の体のデトックス機能はその不要物を体外に排出できないほど衰えているのか、と。
ここでは合成保存料を例にとりますが、
時々「無添加」食品を作られている方が「微生物も生き物、人間も生き物。だから微生物が死ぬような合成保存料は危険だ」と言っておられるのを耳にします。
たしかにどんな物質でも量が多ければ毒性が出るでしょう。
けれど人間と微生物では毒性となる摂取量には差があるのではないでしょうか。
例えば保存料として使われているソルビン酸ですが、
「微生物はソルビン酸を分解できないので、添加した食品は腐敗を遅らせることができる。」
「人間は少量のソルビン酸なら水と炭酸ガスに分解できる。」
ここからわかるのは、少量のソルビン酸の入った食品は腐敗せずに保存することができるが、
無添加の食品は短期間で腐敗してしまうということです。
残念ながら私たちは買ってきたものを保存せずにすぐに調理できるというわけではないですよね。
たいていの方が冷蔵庫で一定期間保存すると思います。
もし食品がすぐに腐るとしたらそれはそれで大変です。
それにコンビニやスーパーマーケットの食品がもし完全無添加だったら、
昨今問題になっているフードロス問題はますます深刻なことになってしまうのではないでしょうか。
ソルビン酸は亜硝酸と組み合わさると発がんリスクが高まるという報告もあるので、
長期間摂取することで体への悪影響も懸念されはします。
だから私たちが自分の健康を守るために考えるべきことは、
目的に応じて柔軟に方法を選択してくことだと思うのです。
時間が取れる時はできるだけ自炊をし、素材から調理するといった方法をとる・・・といったように。
それは多忙な現代人にとっては簡単なことではないと思います。
時にコンビニやスーパーのお弁当やお惣菜で済ませてしまいたいこともあるでしょう。
でも少し意識を変えるだけで食生活は変わります。
自分からできるだけ体に優しいものを取り入れようと意識することで、
添加物をむやみに批判したり恐れたりする必要はなくなるように思うのです。
乳化剤について
グリセリン脂肪酸エステル,ソルビタン脂肪酸エステル, プロピレングリコール脂肪酸エステル,しょ糖脂肪酸エステル
こちらは食品に使われている乳化剤です。
乳化剤の働きは、
「湿潤・浸透、可溶化、起泡、消泡、滑沢、抗菌」
といったものです。
普通にパンをこねていると、水分と油脂とは分離せずに混ざるのですが、
なぜ乳化剤が必要なのでしょうか。
それは実はこの「抗菌」という作用にあると思われます。
ふわふわのパンをカビを生やさずふわふわのまま長持ちさせる「防カビ剤」。
乳化剤目的以外で添加する場合、添加物名を記載しなければなりませんが、
「乳化剤」だと言えば、名称を記載する必要はありません。
とくにカビや酵母、グラム陽性菌の発育を抑制する作用がある脂肪酸エステル類は、
「乳化剤」の名を隠れ蓑とし添加されていることがあります。
まとめ
イーストフードの働き
①水の硬度を変える
②イーストの栄養となる
③グルテンの安定と強化をはかる
イーストフードは体に悪いかどうか
厚生労働省で安全基準が定められていて、大量摂取しない限りは安全性が確保されている。
ただ、乳化剤や保存料など、長期摂取により影響が懸念される成分もなきにしもあらずである。
そのため、できれば素材から調理することをこころがけ、
体に優しい食品を摂取する意識をもつことが大切だと思う。