天然酵母のゆったりした発酵サイクルを味方に、子育てとベーグルづくりを両立する方法。私の実体験をもとに、時間の区切り方・スケジュール例・マインドの作り方をお伝えします。
1. はじめに — 子育てと開業を両立するための最初の考え方
子育てをしながら自宅でベーグル店を始めると聞くと、「大変そう」「時間がない」と感じるかもしれません。でも大切なのは、すべてを一気にやろうとしないことと、工程を子どもの活動リズムに合わせることです。特に天然酵母ベーグルは発酵に時間がかかるため、その“待ち時間”をうまく使えば、育児や家事と無理なく両立できます。
2. 私が守っていた「作業×子どもの時間割」の大原則

私がベーグル店を始めたのは、下の子が幼稚園に入ったタイミングでした。以下が私の基本ルールです。これが、働き続けるための土台になりました。
① 材料準備は「週に一回の集中タイム」で片付ける
幼稚園に行っている間に、翌週分の粉や砂糖、酵母などをまとめて計量・パックします。1〜2時間の作業で1週間分の下準備ができるので、平日の朝の負担がグンと減ります。
② 仕込みは「販売日の2日前」からスタート
天然酵母はゆっくり育つので、販売の2日前からすでに仕込みを始めます。
ホシノ天然酵母は週に一回、必ず新しいものを種起こしします。それから中種作り、ミキシング、分割・・・と進んでいきます。
週に3日間の営業ですが、実際にはほぼ毎日何かしらの作業があります。しかしその作業は細分化されているので、慣れてくれば生活のリズムに取り入れられます。
③ 販売日は早朝に集中して片付ける(私の実例)
- 4:00 起床・仕込み開始
- 7:00 作業終了(成形〜焼成完了)
- 7:00 子ども起床・朝食・お弁当作り
- 8:30 幼稚園へ送っていく(うちの幼稚園は徒歩通園が決められていたので必ず毎日一緒に歩いて通園)
- お迎え時間になると店舗に鍵をして、ダッシュでお迎えに。(母に頼める日は頼んでいました)
- 17:30 閉店→夕食準備→お風呂→就寝準備
この流れを守ることで、販売日に家族への負担を最小限にしつつお店を回せました。
3. 天然酵母(ホシノ)とイーストの“時間設計”比較

ここが肝心です。私が使っているのはホシノ天然酵母(起こし方の詳しい解説はこちら:ホシノ天然酵母の起こし方)。工程を簡単にまとめると、
- 酵母種発酵:24時間
- 中種づくり:半日
- ミキシング
- 一次発酵:約半日
- 分割・丸め・成形
一方、イーストで作る場合の典型的な流れは、
- ミキシング:約15分
- 一次発酵:約30分
- 分割・丸め・成形
- 二次発酵:約25分
天然酵母の“長さ”が生むメリット
天然酵母の発酵は時間がかかるぶん、作業と作業のあいだにまとまった“行動できる余白”ができます。これを利用して、買い物や家事、ブログ更新、家計管理などをこなすことが可能です。私は発酵の長さを逆手に取り、日々の家事と仕事を並行して進められるようスケジュール化しました。
イーストは速いが“ほったらかしにできない”という落とし穴
イーストの利点はスピード。インスタントドライイーストという名前が実にしっくりきますよね。
しかしその速さが、育児と同時進行する際には裏目に出ることがあります。
パン作りはタイミングが命。しかもイーストは生き物ですから、その時々の温度や湿度でも状態は変わってくる。
そのタイミングに細かく合わせる必要があるため、子どもの急なぐずりや着替え、送り迎えなどで作業を中断すると取り返しはつきません。子育て中は“速さ”よりも“余裕”が重要になる場面が多いのです。
4. 実践的な工夫 — 私がしていた“時間のやりくり”
以下は私が実際に取り入れていた工夫です。無料記事では全体像を、詳細は有料ノートで提供しています(下部に案内あり)。
・計量のルーティン化(週1回)
材料の計量は、幼稚園で子どもがいない時間にまとめて片付けます。小分けにして冷蔵や冷凍庫に保存するだけで、当日の準備がずっと楽になります。
・作業を“短時間の塊”に分けない
天然酵母の性質を活かし、家のことは長時間の待ち時間を利用してやってしまう。
その反面、店舗経営の計量などの短時間で済む作業はまとめて一気に片付けます。
販売日朝の4時〜6時半は私にとっての“鬼働くダッシュ時間”でした。
・周囲の協力は当然に頼る
お店がある日は母に幼稚園へのお迎えを頼んでいました。頼める人がいるならためらわず頼みましょう。頼ることであなた自身も長続きできます。
5. マインドセット:完璧主義を手放す
開業初期は「全部自分でやらなきゃ」という気持ちに駆られがちです。でも子育てと仕事を両立するためには“できる範囲を続ける”ことが最優先です。子どもが熱を出したりすると途端にスケジュールは狂います。
でもそんな日もあります。自分を責めないで自分に優しくしてもいいと思います。
6. 私が週3回で続けてよかった理由
私の場合、販売日は週3回に抑えていました。この頻度が、家族との時間・家事・睡眠・自分の休息のバランスを保つのにちょうどよかったのです。ペースを抑えることで、心身ともに続けられる体制が整いました。
7. 客観的な不安への備えと対策
不安は必ずあります。以下のような対策が有効です。
- 予備日を1〜2日設け、万が一に備える
- 販売数は控えめに設定し、需要に応じて徐々に増やす
- 家族と事前にスケジュールを共有し、協力体制を確認する
8. 子どもとの“質の高い短時間”を作る工夫

お店のある日は、公園遊びや長時間の外出は難しくなります。だからこそ、短い時間を大切にしました。幼稚園から帰った時間にお店でおやつを一緒に食べたり、その日の出来事を聞いたりするなど、短時間でも濃いコミュニケーションを意識すると、子どもも満足しやすくなります。
9. まとめ — 小さく始め、続けることが力になる
天然酵母の長時間熟成は、単なる製法の特徴ではなく、子育て中の働き方を支える“時間の余白”を作ってくれます。イーストのスピードは魅力的ですが、子育てと両立するなら、私は天然酵母のリズムのほうが相性が良いと感じています。
重要なのは、完璧を追い求めることではなく、積み重ねられる仕組みを作ること。週に3回、自分のリズムに合わせて続けることで、少しずつ“あなたのファン”が育っていきます。


