パンの仕上がりに影響を与える「仕込み水」とは?
適切な仕込み水の温度とは
仕込み水温を求める計算式
大体の仕込み水温を知る目安として、広く一般的に知られている計算式を紹介します。
仕込み水の温度は室温、粉温度、仕込み水の温度を足したものを3で割って、
ミキサーの影響で上昇する温度をそこからマイナスすることで算出できます。
仕込み水の温度=(室温+粉の温度+仕込み水の温度)÷3−(ミキサーの摩擦により生じる上昇温度)※
※摩擦上昇温度はミキサーの大きさや仕込み量でも変わりますが、
ミキサー使用時の生地上昇温度は
一般的には6~7℃、
特に夏は8℃、
冬は3℃ほど。
またニーダーを用いた場合は5℃程度。
例えば・・・
本日の室温が16℃だとします。
粉の温度は16℃で、
希望のこね上げ温度は26℃とします。
ミキサーを使用する時、今は冬なので3℃上昇すると考えて式に当てはめてみましょう。
(16℃+16℃+仕込み水の温度)÷3+3℃=26℃となって、
32℃+仕込み水の温度=(26-3)×3
仕込み水の温度=69-32=37℃
仕込み水の温度が37℃になることがお分かりですね。
「室温16℃、粉の温度16℃の時は37℃の水を用意すれば26℃にこねあがる」ということなのです。
パン生地は冷たいままではうまく発酵が進みません。
とくに冬場はこんなに温度の高い仕込み水を用意しなくてはなりません。
(あくまで机上の計算ですが)
それでもいくら室温が低く、計算ではこうなったから、と、
100℃に近いお湯を使用することなどできません。
なぜならイーストは45℃以上になると死滅し始めるからです。
またイーストの活性が最大になる38℃の仕込み水を使っても、
あまりに寒い時期は目標のこね上げ温度に達しないこともあります。
その時は湯せんでミキサーボールを温めて、
生地温度の調整をしなければならないこともあります。
逆に暑い夏はどうでしょうか。
室温は高く、それに応じて粉温も高くなりますので
仕込み水は冷たいものを使用します。
しかし限りなく0℃に近い氷水を使用しても
生地の温度が高くなる場合があります。
その時は仕込み水以外の材料
(粉、油脂、卵など)を冷やしたり、
ミキサーボールを冷やして生地温度の調整をしなくてはなりません。
それくらいに仕込み水の温度は発酵と深く関わっているのです。
生地のこね上げ温度について
ここで仕込み水の温度との関係で希望こね上げ温度という言葉が出てきましたので、
生地のこね上げ温度についても触れてみたいと思います。
パンを上手に作るポイントは何でしょう?と問われれば、
私は「生地のこね上げ温度」と答えます。
パン作りのコツは生地を順調に発酵させ、タイミングよく作業を進めることです。
生地のこね上げ温度が高いほど発酵時間は短くなり、低いほど長くなります。
こね上げ温度と発酵時間。
その相関を理解することが上達への近道となります。
春夏秋冬、室温は常に変化します。
こね上げ目標温度を毎回ぴったり同じにすることは不可能だと言えます。
しかしプラスマイナス2℃くらいまでなら許容範囲です。
ここで例を挙げてみましょう。
目標こね上げ設定温度28℃として一次発酵を50分、
二次発酵を30分させるとします。
実際のこね上げ温度が26℃しかなかった時、
この2℃の差を埋めるために、
一次発酵を10分追加の60分にして二次発酵を30分させる。
このように10分間一次発酵を引き延ばせば、十分回復できるでしょう。
自分がパンを作るときの仕込み水の温度、生地のこね上げ温度をその都度
記録していくことは、自分がパン作りをする環境を知ると言う点でも
失敗を繰り返さない方法であることは間違いありません。
ミキサーとニーダーの違いってなに?
さて、前の項目でミキサーとニーダーでは生地の温度のこね上げ時の温度に差があると述べました。
ここではその違いについて説明します。
ミキサー
パン屋で使用されている縦型ミキサーと同じく、生地を上から押さえつけた状態で回転させながらこねる。
そのため生地の中に十分な酸素を取り込むことができ、引き延ばしたり折りたたんだりすることでなめらかな伸展性のあるパン生地に仕上げることができる。
※パン生地を引き延ばしたり折りたたんだり→これは手ごねの作業でも繰り返し行いますね!
家庭用ならスタンドミキサーがパン作りに適している。付属の「ドゥフック」や「スパイラルフック」を使用することで業務用縦型ミキサー同様の生地の仕上がりが期待できる。
ニーダー
内釜(もしくは外釜)の底部にあるハネを回転させることで生地をこねる構造。
そのため、生地を下側から転がしながらこねるので、生地は上に逃げがちになる。
そのため、ミキサーよりも生地に巻き込む酸素は少なくなる。
ミキサーよりも作業効率は低い。
それならニーダー(ホームベーカリーも同様)ではおいしいパンを作れないの?
と思われるかもしれません。
たしかに、本格的にパン作りをしたいというならばスタンドミキサーが適しています。
しかしかなり値段は高くなります。
それに比べ、家庭用のパンニーダーは、スタンドミキサーよりは安価なものもあります。
少量の生地からこねることができるので、家庭でのパン作りに適していると言えます。
また、ホームベーカリーのこね機能を使えば一石二鳥。
新たに置き場所の心配をする必要はありません。
ミキサーにするかニーダーにするか・・・迷いますよね。
でも、これは自分のパンを作る目的の最終地点はどこなのか、によるのではないでしょうか。
誰しも有名ブーランジェリーと同等レベルのパンを焼きたい。
プロ級まで極めたい!
と思っているのではないと思うのです。
子供たちに安全な無添加パンを食べさせたい。
朝食に焼きたてのパンを食べたい。
それなら置き場所や価格の心配をする必要はないのかもしれません。
家庭でパンを手作りするために開発された家庭用パンニーダーなら
十分おいしいパンを作ることができます。
誰のためにどんなパンを作りたいか。
あくまで機械はそのための道具なのです。
仕込み水の性質とは?パンには硬水と軟水どちらが向いている?
パンには軟水、硬水どちらが向いている?
パン作りに適した弱酸性水について
次に仕込み水のpHについてです。
軟水か硬水か、というよりもpHの方がパン作りには重要です。
仕込み水にアルカリ性の強いものは適さないのです。
なぜなら多くのパン生地はpH7(中性)~pH5(弱酸性)に位置しているからです。
これは製パンの原料が中性から弱酸性であるのと、
イーストのアルコール発酵の副産物である有機酸が弱酸性であるからです。
水分量の違いによるパン生地の状態について
今度は、パン生地に使用する粉のトータル量を100%と考えた時の
粉量に対する全水分量、加水率について考えてみましょう。
ここでいう全水分量は、仕込み水だけでなくすべての材料に含まれる水分の総量をいいます。
リーンな生地は小麦粉が
材料の大半を占めるので、
粉対比の仕込み水量で大体の生地の硬さをイメージできるのですが、
リッチな生地は基本材料のほかに数多くの副材料が配合されるので複雑になります。
リーンな生地とリッチな生地についてはこちらをご覧ください。
加水率 55~60%
水分の少ないパン(例:ベーグル)
加水率 70~80%
ハード系のパン(例:フランスパンやカンパーニュ)
まとめ
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