オリジナル小説

オリジナル小説

枝豆とカルピス 16

16, 健士は今日もコンビニの鮭おにぎりをほおばっていた。 可乃子から朝渡された弁当は店のカウンターに置いてきた。 得体のしれないもののようでなんだか食べる気がしない。 この状況下、赤の他人同然の人間が作った ...
オリジナル小説

枝豆とカルピス 15

15. (ぎっちりぎちぎち。 力加減がわからん。) 朝六時に起きた可乃子は、 こぶし大の飯粒をぎゅうぎゅうと力いっぱい握っていた。 おにぎりの中身はカウンターに置いてあった年代物の梅干しだ。 「のーりーの...
オリジナル小説

枝豆とカルピス 14

14. 健士は、目にかかるほど伸びた前髪を鬱陶しそうにかきあげた。 駅までの道。 となりでは可乃子に作ってもらったオムライスを平らげたキヨラが 満足そうな顔をして歩いている。 「うまかったわぁ。最高。可乃子さん...
オリジナル小説

枝豆とカルピス 13

13. (なんであんな見知らん女と一緒に暮らすことになったんか わけがわからん。) 健士は久しぶりに登校した高校の教室で、コンビニの紅鮭おにぎりをほおばっていた。 親父が死んでからコンビニ食をよく口にするようになった...
オリジナル小説

枝豆とカルピス 12

12. まっちんが店先に立ち、仕事を始めると、信美は部屋の掃除にかかった。 自分の部屋、両親の部屋、まっちんの部屋と、順番に掃除機をかけていく。 その間にドラム式の洗濯機はまわり続け、バスタブにふきかけておいたクリーナーの...
オリジナル小説

枝豆とカルピス 11

11. 朝だ。 可乃子はまるで旅行にでも来ているかのような気分で、新しい布団の中で目を開けた。 起き上がらずにそのまま瞳だけを動かして あたりをうかがう。 視線の先には、古ぼけた黒いスーツケース と小さな...
オリジナル小説

枝豆とカルピス 10

10 共同生活というものを、これまで生きてきてほとんどしてこなかった可乃子は、だれかが同じ空間に暮らしているという感覚を受け入れられない。 しかもその同居人は若い男子である。 (てへへっ、若い男子たってあたし産んでんだけど...
オリジナル小説

枝豆とカルピス 9

9. ぱちん ぱちん 早朝、まだ薄暗いバーカウンターでひとり、 健士は昨夜の黒豆の残りを枝から外していた。 黒豆は鞘の根本から切ってしまわず、鞘をすこし切る様子で枝から外すのだ。ついでにお尻のほうの鞘にも切り込...
オリジナル小説

枝豆とカルピス 8

8.「もうくっついてこないでよ」 可乃子は太ももに強くしがみついてくる健士のことを押しのけた。 それでも健士はぐずぐずと泣きながらくらいついてくる。 「なんでわかんないの?あたしは嫌だって言ってんの 離してって言って...
オリジナル小説

枝豆とカルピス 7

7.賑やかな話声が店の中にあふれている。 それを背中に、正彦は静かに階段を上がった。 可乃子がいつまでたっても降りてはこないのがふいに気になったからだ。 暗く狭い階段を登りきると、 開けっ放しになった和室のガラス戸か...
タイトルとURLをコピーしました