『同志少女よ、敵を撃て』逢坂 冬馬 著
第二次世界大戦中の独ソ戦。
当時ソ連軍に実在した女性狙撃隊をモデルにこの物語は描かれています。
主人公のセラフィマは、ソ連の小さな村で母ともに
猟師として生活を送っていました。
しかし戦下、襲ってきたドイツ兵に村を焼かれ、目の前で母を殺されてしまいます。
彼女はドイツ兵への復讐を誓い、
厳しい訓練を受け一流の狙撃手となっていきます。
これは「武器を手に祖国のために戦い抜くのが正義なのだ」という物語です。
この小説ではセラフィナとともに狙撃部隊に配属された同志少女たちの目から見た
戦争が語られています。
たしかに作者逢坂さんは第二次世界大戦をモデルに
フィクション小説を書いたと言っています。
頭の中に物語が生まれ、構想を練り、
執筆をする。
当時、逢坂さんはこの物語に時事性を持たせなかったはずだったのですが、
2022年2月末のロシアのウクライナ侵攻により、
自分の小説のとらえられ方がすっかり変わってしまったと言います。
確かにそうかもしれません。
私とて最初読み始めた時は違和感を抱かずにいられませんでした。
小説の中の少女はソ連の兵士であり祖国を守るために戦っているのですが、
フィクション小説として読むことがどうしてもできなかったのです。
読みたい、読みたい、と思っているうちに時が過ぎてしまい、
発売当時とはまったくちがう世界情勢の中で
私はこの本を読むことになってしまったのですね。
しかし読み進めるうちに、私はそのストーリーがくり広げられる舞台が
どうというよりも、セラフィナやそれをとりかこむ人間ドラマに心を奪われていきました。
結果的にこの小説を読んで良かったと思います。
セラフィナの貫かれた強い意志。しだいに芽吹く友情。仲間の死。
狙撃手として敵を撃つ、そこに引いてはまた寄せる葛藤の波。
次第に麻痺していく人間性。自分を怪物だと落胆する。後悔。苦しみ。
人間性を取り戻させてくれた共に戦う仲間や師の存在。
彼女はこの物語の中で終始、自分に問いかけています。戦う意味を。
今、日本は戦争に巻き込まれていません。
セラフィナのように怖い思いや悲しい思いをせずにすんでいます。
けれど、戦う意味ってなんなんでしょうか。戦争する意味っていったい何・・・。
家族・・・大切な人を守ること?
逢坂さんは素晴らしい筆力で私にそれを訴えかけてきました。
私は読み終わった今も考えています。この小説がその機会を与えてくれました。
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